月間検索流入20万SS、AI引用500%増。生成AI時代の医薬品ECで「検索とAIの両方に選ばれる」状態をつくった事例
課題・導入の経緯
医薬品をオンラインで購入できるBtoC ECサイトからのご相談でした。商品ラインナップはED治療薬、ダイエット薬、生活改善薬、漢方など多岐にわたり、数百〜千SKUクラスの大規模ECに該当します。
業界としては、規制業種(医薬品)かつYMYL(健康・医療)領域に該当するため、検索エンジンからの評価基準が一般ECよりも厳しく、「単に商品ページを並べる」だけでは順位がつかないジャンルです。加えて競合には、テレビCMやマス広告で認知のある業界最大手や、特化型のオンライン診療プラットフォームが複数存在しており、レッドオーシャンと言ってよい市場環境でした。
クライアントの当初の課題感は「商品名×通販」「商品名×購入」といった購買確度の高いクエリでは一定上位を獲得できているものの、検索ボリュームの大きい「悩み×薬」「商品名×副作用」「商品名×効果」のような検討層・準顕在層向けクエリでは順位が付いていない、というものでした。
弊社が初期調査で提示した課題定義は、これより一段深いものでした。具体的には次の3点です。
- テクニカルSEOの基本要件(canonical、XMLサイトマップ、パンくず、alt属性、robots.txt 等)が複数の項目で未対応のまま放置されており、コンテンツ施策をいくら積んでも評価が乗らない状態にありました
- カテゴリページが評価分散しており、トピッククラスターの中心となるべきページが「ピラーページとして機能していない」状態にありました
- そもそもYMYL領域でE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を担保する体制(医師・薬剤師監修、参考文献、編集ポリシー)がコンテンツ側に組み込まれていませんでした
加えて、支援開始の少し後から生成AIによる検索行動の変化(Google AI Overviews、ChatGPT・Perplexityへのトラフィック流出)が顕在化しはじめており、「従来のSEOだけでは戦えない」という前提を共有することから始まった案件でした。
補足要件
- 規制業種のため、コンテンツ制作には薬剤師・リーガル・医師の三段階チェックが必須となり、1記事あたりのリードタイムが通常メディアより長くなります
- クライアント側に開発リソースの制約があり、テクニカル改修は改善指示書を弊社で詳細に作成し、開発側の判断材料にしてもらう運用としました
- 代理店経由案件のため、定例MTGの参加者構成・報告フォーマットも代理店ルールに合わせて設計しました
- 競合(業界最大手)はマス広告・テレビCMで認知獲得しており、ブランド指名流入の規模が桁違いです。SEO単独での真正面の勝負ではなく、指名・カテゴリ・コラムの三層構造で囲い込む戦略が必要でした
- 既存サイトに大量の商品ページ(数百ページ規模)があり、優先順位を付けながら順次リライト・改善を進める前提です
テクニカル課題の全件監査と、n改修指示書ベースの開発連携
着手後まず行ったのは、コンテンツ施策ではなくテクニカル基盤の整備でした。
サイト全体に対して80項目近いSEO監査を実施し、そのうち約20項目に課題があることを確認しました。canonicalタグの未設定、XMLサイトマップ未登録、robots.txt不在、パンくずリスト未設置、alt属性数百枚分の未設定、商品ページのTitle・descriptionの重複など、コンテンツ施策以前に評価が乗らない要因が複数積み重なっている状態でした。
この段階で重要なのは、開発側に「直してください」と投げるだけでは動かない、という現実認識です。クライアント側に開発リソースの制約があるため、弊社で該当する全項目に対して個別の改修指示書を作成し、対象ページ・改修内容・期待される効果・優先度を明記する形で渡しました。これにより、開発側は「何を、どこまで、なぜ直すか」を判断できる状態になり、約2ヶ月で主要なテクニカル課題の改修が完了しました。
テクニカル改修は順位を直接押し上げる施策ではありませんが、「コンテンツ施策の効果が乗る土台」をつくる工程です。ここをスキップして上層のコンテンツ施策に進むケースを業界では散見しますが、結果として施策効果が出ず原因不明になりがちなため、最初に必ず通すべき工程と考えています。
トピッククラスター設計と、nカテゴリページのピラー化
テクニカル基盤の整備と並行して、サイト全体のトピッククラスター設計を行いました。
医薬品ECは商品数が多く、放置すると「サイトトップ・カテゴリ・商品詳細」がそれぞれ別のキーワードで評価を取り合い、評価が分散します。競合の業界最大手を分析したところ、彼らはカテゴリページをピラーページとして強く評価集中させ、配下に商品詳細とコラム記事をクラスター配置する構造を取っていました。一方クライアントサイトは、カテゴリページの情報量が薄く、ピラーとして機能していない状態でした。
そこでカテゴリページ単位で「対策キーワード・対策意図・必要セクション」を定義し直し、よくある質問・利用フロー・医師薬剤師コメントなど、購買検討に必要な情報を網羅的に追加する設計を策定しました。同時に、配下の商品ページからの内部リンクとパンくずを整理し、カテゴリページに評価が集まる構造に組み直しました。
カテゴリ名そのものの見直しも実施しています。一部カテゴリでは、検索ボリュームの大きい上位語をカテゴリ名に組み込むだけで順位が大きく動く(例:あるカテゴリは「30位台→1桁順位」「圏外相当→2桁前半」といった水準)ことが確認できました。「ページ単体の改善」よりも「ピラー化のための名称・構造の見直し」のほうがレバレッジが大きい、というのが医薬品ECに限らず大規模ECでの共通する示唆です。
YMYL対応のn医師・薬剤師監修コラム量産体制の構築
カテゴリページがピラーとして機能し始めた後、配下のクラスターを埋める形でコラム記事の制作体制を立ち上げました。
YMYL × 規制業種という領域柄、品質基準は通常メディアより圧倒的に厳しくなります。具体的には次のとおりです。
- 1記事あたり4,000〜7,000字程度、ユーザーの悩み解決を完結させる情報密度を確保しました
- 構成→原稿→薬剤師・リーガルチェック→医師チェック→入稿、という5段階のフローを敷きました
- 全記事に医師監修者情報・参考文献を付与しました
- アイキャッチ画像下に監修者プロフィールを配置しました(記事末尾ではなく上部に置くことで初動の離脱を抑え、E-E-A-Tを早い段階で示す設計です)
これらを定常運用に乗せるため、KW選定・構成テンプレ・チェックリスト・入稿ルールを最初に全て整備し、月10〜20本ペースで制作を進めました。半年強で累計100本超を公開しています。
ここで重要だったのは、コラムを「単発の記事」として扱わず、カテゴリページ・商品ページとセットでクラスターを形成する設計にしたことです。各コラム末尾に関連する商品ページ・カテゴリページへのCTAを設置し、コラム→商品ページの送客率を継続的に測定しました。直接的な購入CVだけでなく、コラム経由の診療予約・会員登録なども中間KPIとして追っています。
生成AI時代を見据えたLLMO対策n(AIクローラー許可、構造化データ、参考文献)
支援を進める中で、検索結果上にGoogle AI Overviewが頻出するようになり、「順位は上がっているのに流入が伸びない」現象が顕著になってきました。実際、医療系クエリの過半数以上でAI Overviewが表示される状態に到達しています。
この段階で、従来のSEOから一歩踏み込み、LLMOを統合した設計に切り替えました。具体的には次のとおりです。
- robots.txtの拡張:Google-Extended、GPTBot、PerplexityBot、ClaudeBot を明示的にAllowしました。AI検索エンジンが学習・引用するクローラーの巡回を妨げない設定に整理しています
- 構造化データの拡充:商品ページのProductマークアップ、よくある質問のQAPageマークアップ、組織情報のCorporationマークアップを実装しました。AIが「このページが何を扱っているか」を機械可読な形で理解できる状態をつくっています
- 参考文献リンクの追加:商品ページ・コラム記事に、メーカー公式情報や論文データベース等の権威性の高い外部リンクを付与しました。AIが引用判断する際の「信頼スコア」を高めました
- 一次情報の発信:実際の診療データを元にした「リアルな相談内容FAQ」を作成し、ページとプレスリリース両方で発信しました。AIに引用されやすい固有情報を持つようにしています
これらは「AI引用を直接狙う」ためというより、AIにとって理解・引用しやすい形に情報を整えるための施策群です。結果として、AI引用数は支援開始時点の約5倍に伸び、ChatGPT・PerplexityなどAI検索エンジン経由の流入とCVも継続的に発生する状態になりました。
被リンク戦略としての開業医インタビュー、nE-E-A-Tの外部からの担保
仕上げとして、外部からのE-E-A-T担保にも着手しました。
YMYL領域では、サイト内のコンテンツがどれだけ充実していても、外部からの言及・被リンクが薄いと評価が頭打ちになりがちです。そこで、現役の開業医師に対するインタビュー記事を十数本〜数十本規模で制作し、次のような取り組みを進めています。
- インタビュー記事をクライアントサイトに掲載しています
- 同時に、医師側の医院サイトにも記事を掲載してもらい、被リンクを獲得しています
- 医師による「実際にこのサービスを評価している」という事実をWeb上に残し、権威性・信頼性の補強につなげています
このような形で、サイテーション獲得とE-E-A-T強化を同時に進めました。プレスリリースを介した一次情報レポートの発信もこの文脈で実施しており、外部メディアからの引用機会を継続的に作っています。
結果または成果
月間検索流入は数万SS規模 → 20万SS超え、AI引用数は月間100件前後 → 数千件規模(500%増)まで伸長しました。月間注文完了CVも100件前後から200〜400件で推移する水準に到達しています。
業界最大手や特化型プラットフォームがひしめくレッドオーシャン市場において、検索流入・AI引用・CVのいずれも継続的に積み上げ続けられる構造を作ることができました。
- 01 テクニカル基盤を最初に固めたこと:上層のコンテンツ施策がすべてここに乗りました
- 02 カテゴリページのピラー化を最優先したこと:単発の商品ページ改善より圧倒的にレバレッジが大きい施策でした
- 03 YMYL対応のコンテンツ品質基準を妥協しなかったこと:薬剤師・医師の三段階チェックは工数増になりますが、Googleコアアップデートの度に「むしろ評価される側」に居続けられました
- 04 生成AI時代への対応を早期に組み込んだこと:「順位は上がるが流入が伸びない」局面を、AI引用と一次情報強化で打開しました
- 05 外部からのE-E-A-T担保にまで踏み込んだこと:被リンク・サイテーション・指名検索の三層で囲い込みの構造をつくりました
このプロジェクトは、「YMYL × 規制業種 × 大規模EC」という、SEO最難関領域の代表例です。生成AIによる検索行動の変化が最も早く・激しく現れている領域でもあり、「SEOはもう終わった」「AIに食われる」と言われがちな現在において、SEOとLLMOを統合的に設計し、テクニカル・コンテンツ・E-E-A-T・サイテーションの全方位を地道に積み上げれば、検索流入もAI引用もCVも伸ばし続けられることを示す代表的な事例となりました。
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